大悲心陀羅尼(だいひしんだらに)とは、正式には『千手千眼観自在菩薩広大円満無礙大悲心陀羅尼』といい、「なむからたんのー、とらやーやー」という出だしで知られる、日本では禅宗で広く読誦される基本的な経典である。
なお、陀羅尼を自家薬籠中の物とする真言宗に於いて重用する三陀羅尼は、現在『佛頂尊勝陀羅尼』、『宝篋印陀羅尼』、『阿弥陀如来根本陀羅尼』が挙げられているが、1908年(明治41年)刊行の廣安恭壽 著『三陀羅尼経和解』によれば、その時代には『阿弥陀如来根本陀羅尼』ではなく『大悲心陀羅尼』が数え上げられ、因みにとして『阿弥陀―』も示されていた。従ってこの陀羅尼が禅宗のみのものとは言えないが、なぜこのように変わったのかは不明で宗門内の事情と思われる。